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%研究紹介 % %July 2, 2015 Updated.

研究紹介

私の研究テーマは,幾何形状モデリング(geometric modeling)とその応用に関するものです.おおまかにいうと,コンピュータの中で「形」を扱うことです.最近は,様々な分野で形を扱うということが多くなっているようです.現在の職場では,土木関係へ応用する研究に従事しています.以下にこれまで行ってきた主な研究テーマについて概略を述べます.

スクリーン空間へのペイントによる視点決定法

複雑な3次元形状は,表示だけでも膨大な時間がかかるため,任意の視点でみるという作業が困難です.そこで,ユーザがペイントによって指定した領域が正面に見えるような視点決定法を開発しました.提案手法は,ユーザによるスクリーン空間へのペイントを入力とします.ペイント結果はマスク画像にして,デプスバッファから該当する領域の深さ情報を取得します.ここから,ペイント領域の3次元形状を復元し,擬似的な法線を計算し,領域全体が入るようなカメラ位置を決定します.この手法は,画面の解像度に依存するため,数億点のデータでも簡単に計算できます.またライトの設計などでも利用可能です.

CT画像からの中立面抽出

車のボディなどの薄板部品のCADモデルは、ソリッドモデルではなくサーフェスと厚みで表現することが一般的です.薄板機械部品に対するリバースエンジニアリングでもサーフェスモデルを作成することが求められます.代表的な手法である中立軸変換(Medial axis transform)は,中心を通る面(中立面)を作成できますが,分岐部を正しくポリゴン化することが困難などの実用上の問題を抱えています.そこで,中立ボクセル(中立軸のボクセル表現)からサブサンプリングを用いて,ポリゴン化と位相の簡略化を同時に行う手法を提案しました.これにより,分岐が多い形状でも正確にポリゴン化ができます.また,ワイヤ状の特徴が混在しているモデルでは,スケルトンが抽出されるように拡張しました.

Out-of-Coreな距離変換

メモリに乗らないような大規模なボリュームデータから距離場を求めるアルゴリズムを提案しました.ボリュームデータを小さなブロックに分割して,ブロックごとに計算します.計算しないブロックは,HDDに保存するのでメモリ使用量を減らすことができます.また並列化も可能です.どのブロックから距離場を計算するかがポイントとなりますが,ブロックごとに伝播された距離値の最小を持たせて,それを優先度として利用することで,少ない回数で必ず収束することを保証したアルゴリズムになりました.論文には書き忘れましたが,任意の距離計量の距離場が計算できるのもポイントです.

球面における高速距離変換

球面状の距離場計算アルゴリズムに関する研究をおこないました.緯度と経度でグリッドに分割された空間において線形で計算できるアルゴリズムを提案しました.

CT画像のボイド抽出

鋳造によってつくられた機械部品には,空気が混入してできる空洞(ボイド)がよく現れます.これは,できる場所や量によっては不良品となるため,定量的な把握が重要です.そこで,機械部品を計測して得られたCT画像のボイドを抽出する手法を開発しました.この問題のポイントは,ボイドが物体内部だけでなく表面に出てくる点にあります.提案手法では,後者のボイドを抽出できるとともに,GPUを利用した高速に計算法を開発しました.

CT/MRI画像からの部分ポリゴン化

CT/MRI画像をポリゴン化するとき,Marching Cubes法などの等値面抽出法を利用することが一般的です.しかし,これらの手法は,形状全体をポリゴン化するため,ある一部のポリゴンが必要な場合,膨大なマニュアル操作が必要となります.そこで,CT/MRI画像で計測された物体の一部分をポリゴン化させる手法を開発しました.具体的には,一番外側にある最外郭面抽出,頭蓋骨の裏側にある脳鋳型抽出,声道形状の抽出などをおこないました.

電磁場解析のための非一様グリッド生成

FDTD法を用いた電磁場解析を行うときにグリッドを生成しますが,解像度が高いと計算時間が膨大になります.一方,解像度を落とすと,配線が断裂して,シミュレーションに問題が出てきます.本研究では,十分に細かいグリッドを削除していくことで精度を保持しつつ計算時間が短縮できるようなメッシュ生成手法を提案しました.

多重解像度に基づくメッシュモーフィング

複数の異なる形状を補間するためには,位相構造が同じで複数の頂点座標値をもったメッシュ生成が必要となります.本研究では,粗い対応関係をとったメッシュを再帰的に分割し,頂点座標値を入力メッシュにフィッティングさせることで補間用のメッシュを生成する手法を開発しました.分割方法が規則的であるため,メッシュが多重解像度表現を持っています.そのため,アニメーションが簡単,法線マップなどで細かい模様を付与できるなどのメリットがあります.また,入力メッシュの構造に依存しないため,3つ以上のモーフィングができます.